既卒者の正社員就職は厳しいと言われていますが、その理由は一体どこからきているのでしょうか?
「企業から既卒者はどう見られているのか?なぜそこまで厳しいのか?」
既卒者の皆さんは気になるところだと思います。
そこで、そんな疑問を少しでもなくせるように、当サイトで記事執筆をおこなっている企業の人事さんに既卒者に対する本音を書いてもらう事になりました。
既卒者の就活について、採用現場の生の声をお届けします。
以下より、就職案内人”SPC”さんの執筆になります
今回は私の自社の採用担当としての意見や、自身の転職エージェントとしての経験、更には色々な企業の人事との交流の中で聞く話を基にお伝えしていきます。
もちろん、就職・転職市場全ての企業が私と同じ見方をしているわけではありませんが、色々な企業との交流の中であがる話として、共通している部分については全てお話ししていきます。
あくまでも一、採用担当の個人的な意見として参考にしていただければと思います。
企業が既卒者に対して感じている事
世間で言われている通り、既卒者に対しての企業の見方は否定的なものが多いです。厚生労働省が2010年に発表した青少年雇用機会確保指針改正により、(※)新卒枠でも既卒者を受け入れるように要請してからは、既卒者を受け入れる新卒求人も増えてきました。ですが、受入数は増えたものの内定率は決して高い数字とは言えません。
企業は既卒者を正社員として採用しづらい?
私自身、紹介会社でエージェントとして10年、うち自部門の採用担当を5年近く行っていますが、既卒者はなかなか採用になりづらいというのが正直なところです。
その理由についてお伝えしていきます。
理由1:ビジネスマナーを一から教えないといけない
社会人経験がある人材は、だいたいその会社でビジネスマナーの基礎の研修を受けています。例えば、名刺交換の仕方や、ビジネスメールの作り方、ホウレンソウの重要性などです。
一からこれを教えていくのは企業側から見ると大きな負担です。研修中の社員は、利益を生み出していないので単なる費用ですし、教える研修担当の人件費もそれに上乗せされることを考えると、一人前になるまでのコストが多くかかることになります。
それであれば、新卒で一気に採用して研修したほうが効率が良いという考え方になります。
理由2:リスクをとりたくない
新卒で就職せず既卒になっているというのは、何かしらの理由があってのことだとは思うのですが、その多くがあまり前向きな理由では無いようです。
- 単位が取れずに半年留年したので就職のタイミングを逃した
- やりたいことがみつからずとりあえずアルバイトを続けていた
- 公務員になろうとして試験を受けたが落ちた
これらは、仕方ない面もあるかもしれませんが、結果がネガティブになるということは、会社側からすると人間的にもネガティブな面を持っているのではと考えます。それを払しょくし得るだけの何かがないと、無理に既卒を採用することはしません。採用してからその人が短期退職になったり、何か問題を起こしたときに、責任を問われるのは採用担当者ですから。
理由3:実績がない
あくまで一般論であり実態はそうとも限りませんが、正社員として働いたことがないということは、責任ある仕事を任されてないということになります。
例えば営業職や販売職であれば目標の予算、サービス業であれば顧客満足度など、責任を与えられるとそれに対しての結果が出てそれが実績になります。転職組は、その実績をもとに採用担当者に評価されます。
その実績がない、または実績があったとしてもアルバイトなどの非正規雇用という理由で実績が軽んじられてしまう既卒は、採用担当者からしてみると評価を付けづらく、その人がどれくらい能力(ポテンシャル)を持っているのかがわからないのです。
このような理由から、企業は既卒者を採用しづらいといった状況にあります。
既卒者でも学歴や年齢によって見方は変わる
企業が既卒者を採用しづらいと言いましたが、既卒者の学歴や年齢、空白期間の長さによってもその見方は変わってきます。
既卒でも高学歴は有利に働く場合がある
同じ既卒でも、学歴が高い場合は有利に働く場合があります。日本の会社は保守的なので、学歴を重視する会社はいまだ多いと思います。たとえば極端ですが、「同じ25歳で卒業してからは友人とバンド活動をしていたので既卒になった人」がいたとして、その二人が「東大卒」と「短大卒」だったら、入社後伸びしろがありそうなのは、前者ですよね。東大を出られるだけの学力があるという信用を得られる点が、学歴の最も強いところですし、既卒者でも採用担当者の心を動かすセールスポイントになるのです。
既卒で空白期間が長い20代後半は苦戦しやすい
空白期間の年数に応じても就活の難易度が上がると認識しておいた方がいいと思います。というのは、「その空白期間、何をやっていたんだ?」という理由付けが難しくなるからです。
ブランクが長くなればなるほど、採用担当者を納得させる理由が、提示しにくくなります。1年や2年なら、若気の至りで納得してくれる人もいると思いますが、5年、10年となると、よっぽどの理由がないと、就職しなかったことを正当化することは難しくなるでしょう。
また、基本的な考え方として年齢が高くなればなるほど、それに比例して経験や実績スキルが伴っていないと人材市場での価値はどんどん落ちていきます。それは、業務習得の速度、体力などが、年齢を重ねるごとに落ちていくだろうという一般論があるからです。一から教えるなら、まっさらな新卒のほうが吸収も早く効率的というのが会社側の考え方です。
そのため、空白期間が長い中で就活していく場合、まずは空白期間を払しょくする何か、を見つけることが採用をゲットするために重要なことといえます。
既卒者で不採用になりがちな人の特徴
また、いろんな人を面接していると、既卒者でも不採用になりやすい人の特徴というものがある程度分かってくるようになります。そこで、私の業務経験の中で不採用になりやすい人の特徴についてご紹介したいと思います。
特徴1:既卒になった理由があいまい
前述したように、既卒者が面接対策をする上で、最も注意を払わなければいけないのが、既卒になった理由です。やりたいことが見つからず、そのまま就職せずに、ずるずるアルバイトをしていたため既卒になったというのは、一番よくない類の理由です。会社側からすれば、それはただの甘えにしか見えません。そんな甘えたマインドをもった人材を、会社は採用したいとは思いませんよね。きっと業務でもその甘えは、ところどころで出てくるだろうと想像されますから。
ではどうしたらよいかというと、何か目標があってそれを達成するために既卒にならざるを得なかった、等というというれっきとした理由を述べられるように準備しましょう。もしかしたら、“なんとなく既卒になった”というのは自分の思い込みで、本当は漠然とやりたいことがあったのかもしれません。それは、自分だけでは気づけないことも多いので、信頼できる先輩や、社会人をしている友人、就職エージェントなどに話すことで、客観的に自分を見つめなおすことが、大切になります。
特徴2:誇りをもってアルバイトをしていない
不採用になりがちな人の特徴で、アルバイトで何をしていたか、を明確に答えられない人がいます。
アルバイトの場合、責任のあまりない単純作業的な仕事が多い傾向があるかもしれませんが、普段から真面目に目の前のことに向き合い、自分の頭で考えて状況を良くしようとしている人は、自分の仕事は自分にしかできないという思いが芽生えそれが誇りになります。その誇りがあれば、アルバイトであっても自分はこういう仕事を任されこういう工夫をして状況を改善できた、ということを明確にすらすら答えられるのです。
仕事への向き合い方、真摯さは、雇用形態にかかわらず、その人の根本から出てくるものです。それが、アルバイトで何をしていたか、という質問の答えに表れるのです。
不採用が続いている既卒者は原因を知る事
不採用が続いている場合、「既卒」以外の部分が原因となっている場合もあります。不採用になった際、あるいは続いている場合、自身がなぜ不採用になったのか振り返っていますか?
フィードバックがない限り自分では中々分からない部分ではありますが、毎回自分の中で面接プランを考えそれを実践し検証していく事も大事な事です。そもそも、志望動機があいまい、面接自体のマナーやルールを間違えている、その会社のことをあまり調べていない、などの既卒でも新卒でも、必ず押さえておかなければいけないポイントができているか、今一度見直してみてください。
そして不採用になった場合、なぜダメだったのか必ず振り返る。ここを怠っていると、受からないことをただ「既卒」だからという事にしてしまい、最終的には「もう終わったな。」「一生フリーターでいいや。」など、自暴自棄な結果を招くことにもつながります。
既卒者に対する企業の懸念を払拭する事がポイント
以上の事を踏まえ、既卒者が就活を成功させる為には、企業の懸念事項を知ったうえで、それを払拭するための対策を講ずることが必要になってきます。
■ビジネスマナーを一から教えないといけない
秘書検定などを取得し、最低限のビジネスマナーを持っていることをアピールする
■正社員としての実績がない
アルバイトでもいいので、自分が工夫したことで状況が改善されたことを見つけ出し、それを実績として伝える
■既卒になった理由(空白期間なにをしていたか)がわからないので、マインド面が心配
既卒になった理由を明確にし、相手を納得させることのできるように準備する
■わざわざリスクをとって既卒を採用する理由がない
既卒であっても採用したくなるような、特技や長所をアピールする
というようなことですね。物は言いようです。事実や過去は変えられませんが、捉え方や伝え方で、ある程度、ネガティブなことをポジティブに感じさせることはできるのです。
客観的に自分を見つめなおす機会を
まとめると、採用をもらうために最も必要なことは、自分という商品の説明書の再構築です。前述のような、「採用側から見た懸念事項を払しょくするような根拠」をまずは提示し、加えて「既卒であるというビハインドが気にならなくなるような、自身のセールスポイント」を、自信をもって伝えられるような説明書が必要ですが、いままで使ってきた自分の説明書を再構築するのはなかなか骨の折れる作業です。
自分に対しての捉え方や、自分のことの伝え方は、得てして主観的になりがちです。説明書の再構築には、客観的に自分を見つめなおして、「客観的にみると自分はこう見えるんだ」「同じことでもこういう風に伝えると、前向きに聞こえるな」などという気付きを得ることが必要です。その一番の近道が、客観的に自分をみてくれる、第三者に頼ることです。信頼できる先輩や、社会人をしている友人、就職エージェントなどですね。
特に就職エージェントでは、就職するために、という目的にフォーカスして、自分という商品を客観的に再評価してくれるので、話が早いと思います。また、既卒専門のエージェントには、そもそも既卒を採用することに抵抗がない会社でないと、求人を出しませんよね。つまり、いままで上げてきたような、既卒に対してのネガティブな固定概念が無い会社が多いので、必然的に採用ももらいやすくなるはずです。そういったサービスも一度試してみる価値はあるのではないでしょうか。
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